会社を強くするSWOT分析

~BCPにつながる「守りから攻めへ」の経営戦略~

企業を取り巻く経営環境は、かつてないほど大きく変化しています。

人口減少や人手不足、原材料価格の高騰、カーボンニュートラルへの対応、DX・AIの急速な普及に加え、地震や豪雨などの自然災害、感染症の流行、サイバー攻撃など、企業経営にはさまざまなリスクが存在しています。

このような時代だからこそ、企業には「成長するための戦略」と「危機に備える仕組み」の両方が求められます。

その第一歩となるのがSWOT分析です。

SWOT分析は「経営戦略を考えるためのフレームワーク」として知られていますが、実はBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)を策定する際にも非常に有効な分析手法です。

私は中小企業診断士として経営改善支援やBCP策定支援を行っていますが、多くの企業で感じるのは、「SWOT分析」と「BCP」が別々に考えられていることです。

本来、この二つは密接につながっています。

本記事では、その理由と実践方法について解説します。


SWOT分析とは

SWOT分析とは、自社の経営環境を4つの視点から整理する代表的なフレームワークです。

  • Strength(強み):競争優位となる自社の資源や能力
  • Weakness(弱み):改善すべき課題や不足している経営資源
  • Opportunity(機会):市場や社会環境の変化による追い風
  • Threat(脅威):経営へ悪影響を及ぼす外部要因

1960年代にアメリカで考案され、現在では世界中で活用されています。

経営計画策定、新規事業、マーケティング戦略だけでなく、補助金申請や経営改善計画でも頻繁に用いられる基本的な分析手法です。


以下は、SWOT分析の発展版ともいえる、クロスSWOT分析のテンプレートです。

Opportunity(機会)

・O1 ・O2 ・O3
Threat(脅威)

・T1 ・T2 ・T3
Strength(強み)

・S1 ・S2 ・S3
SO戦略(攻め)

強みを活かして市場機会を取り込む

・SO1 ・SO2 ・SO3
ST戦略(攻め+守り)

強みを活かして災害・競争・サイバー攻撃などの脅威に備える

・ST1 ・ST2 ・ST3
Weakness(弱み)

・W1 ・W2 ・W3
WO戦略(改善)

機会を活かすため弱みを改善する

・WO1 ・WO2 ・WO3
WT戦略(BCPの中心)

弱みを改善し、脅威による事業停止リスクを最小化する

・WT1 ・WT2 ・WT3

クロスSWOT分析では、「強み・弱み」と「機会・脅威」を組み合わせることで、具体的な経営戦略を導き出します。
BCPは、この4つの戦略のうちST戦略(強みを活かして脅威に備える)とWT戦略(弱みを改善して脅威の影響を最小化する)を中心に考える取り組みです。

一方で、BCPの整備によって企業の信頼性が高まり、それ自体が新たな「強み(Strength)」となって受注拡大や取引先からの評価向上につながることもあります。


SWOT分析は「攻め」のためだけではない

SWOT分析というと、

「自社の強みを活かして売上を伸ばそう」

というイメージを持つ方が多いでしょう。

もちろん、それも重要です。

しかし近年では、企業経営において「守り」の視点も欠かせません。

例えば、

  • 南海トラフ地震
  • 首都直下地震
  • 豪雨・洪水
  • 感染症
  • サイバー攻撃
  • サプライチェーンの寸断

こうしたリスクは、いつ発生しても不思議ではありません。

つまり、「脅威(Threat)」を正しく把握し、備えることが企業の存続につながる時代になったのです。

ここでBCPの考え方が重要になります。


BCPとは

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、

災害や事故などの緊急事態が発生しても、重要な事業を継続し、早期に復旧するための計画

です。

例えば、

  • 主要設備が地震で停止した
  • サーバーがランサムウェアに感染した
  • 物流が止まった
  • 主要社員が出勤できなくなった

このような状況でも、

「重要なお客様への供給を止めない」

「できるだけ早く通常業務へ戻す」

ことを目的としています。

つまり、BCPは会社を守るための経営戦略なのです。


SWOT分析とBCPの関係

BCPを策定する際には、

「自社にどのようなリスクがあるのか」

を洗い出す必要があります。

ここでSWOT分析が非常に役立ちます。

例えば、

Strength(強み)

  • 熟練技術者が多い
  • 顧客との信頼関係が強い
  • 自社開発技術がある

災害時でも顧客との信頼を維持しやすくなります。

Weakness(弱み)

  • 特定工場しか生産できない
  • キーパーソンに業務が集中している
  • 紙による管理が多い

BCPでは優先的に改善すべき課題になります。

Opportunity(機会)

  • 補助金制度
  • DXの普及
  • クラウド化
  • テレワーク環境整備

これらを活用することで、災害対応力も同時に高められます。

Threat(脅威)

  • 地震
  • 豪雨
  • 感染症
  • サイバー攻撃
  • 原材料不足

BCPでは、この脅威に対して具体的な対策を検討します。

つまり、SWOT分析はBCP策定の出発点にもなるのです。


クロスSWOTで「攻め」と「守り」を考える

SWOT分析では4つの項目を書き出すだけでは不十分です。

重要なのは組み合わせです。

強み × 機会

新市場への参入、新製品開発などの「攻め」の戦略。

強み × 脅威

技術力や品質を武器に、災害や競争環境の変化に対応する戦略。

弱み × 機会

DX導入や設備更新などを通じて弱点を改善する戦略。

弱み × 脅威

ここがBCPで最も重要な領域です。

例えば、

  • 生産拠点が1か所しかない
  • 電力停止で操業できない
  • 特定担当者しか分からない業務がある

これらは平常時には目立たなくても、災害時には企業存続を左右する重大なリスクになります。


BCPは「守り」ではなく「攻め」の経営

「BCPはコストがかかるだけ」

と思われることがあります。

しかし、現在ではそうではありません。

例えば、

  • BCP認定企業を優先調達する企業
  • BCP策定を補助金の加点項目とする制度
  • ESG経営を重視する金融機関

など、BCPが企業価値そのものになっています。

つまり、

BCPはリスク対策であると同時に競争力向上策でもある

のです。

これはSWOT分析でいう「強み」にもつながります。


中小企業診断士として感じること

企業支援をしていると、

「うちは災害なんて起きない」

という声を耳にすることがあります。

しかし、実際には多くの企業が、

  • 停電
  • システム障害
  • 感染症
  • 部品供給停止

などを経験しています。

一方で、

「何が自社のリスクなのか」

「どこから対策すればよいのか」

が整理できていない企業も少なくありません。

だからこそ、まずはSWOT分析で自社を客観的に見つめ直すことが重要なのです。

その上で、BCPを策定し、「もしも」の時にも事業を継続できる体制を整えることが、企業の持続的な成長につながります。


おわりに ~BCPは「守るための計画」ではなく、「未来をつくる経営戦略」~

だから私は、BCPを構築する際に、お客様企業の経営者だけでなく、現場で働く社員の皆さまと一緒にSWOT分析を行うことを推奨しています。

その理由は、会社の「強み」や「弱み」は経営者だけが知っているものではなく、日々お客様と接する営業担当者、生産現場を支える製造担当者、品質を守る品質保証部門、製品を生み出す技術・開発部門など、それぞれの立場だからこそ気付けることが数多くあるからです。

また、BCPを「経営者が作った計画書」にするのではなく、「社員全員で考え、共有し、実践できる計画」にするためにも、SWOT分析を通じて会社の現状や課題を共有することは非常に重要です。

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)は、災害時のマニュアルや緊急時の対応手順をまとめた文書ではありません。

私は、BCPとは「企業の強みを活かし、弱みを改善し、さまざまな脅威に備えながら、企業が持続的に成長するための経営戦略」であると考えています。

ここで重要なのは、BCPはSWOT分析のすべてを対象とするものではないということです。

SWOT分析は、「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」という4つの視点から経営全体を俯瞰するフレームワークです。一方、BCPが主に対象とするのは、このうちThreat(脅威)、特に地震・風水害などの自然災害や感染症、サイバー攻撃、サプライチェーンの寸断といった、事業継続を脅かすリスクへの備えです。

しかし、BCPは単に脅威への対策を考えるだけではありません。その脅威に対して、自社の「Strength(強み)」をどのように活かし、「Weakness(弱み)」をどのように改善していくかを検討する、経営課題の一側面を扱うものなのです。

例えば、技術力や顧客との信頼関係といった強みを活かして早期復旧につなげることもできますし、特定の工場への依存や属人化した業務といった弱みを改善することで、災害時の影響を最小限に抑えることもできます。

つまり、BCPとは「守るための仕組み」であると同時に、「会社をより強くするための改善活動」でもあります。

SWOT分析によって会社の現在地を把握し、その中でも事業継続に重大な影響を与える脅威に焦点を当て、強みを活かしながら弱みを改善していく。このプロセスこそが、実効性のあるBCPにつながります。

私が掲げる「守りから攻めへ転じる経営支援」とは、まさにこの考え方です。

変化の激しい時代だからこそ、リスクを恐れるのではなく、リスクを正しく理解し、それを経営力の向上へとつなげる。その第一歩として、ぜひ社員の皆さまと一緒にSWOT分析に取り組み、自社らしいBCPを構築していただきたいと思います。

 皆さんの会社でも、SWOT分析をして会社が進むべき方向性を考えてみませんか?
 スマイル経営サポートでは、皆さんの会社で経営に携わっている方、管理職の皆さん、社員の皆さんを集めた SWOT分析をお手伝いしています。

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